「すべてを拒み、すべてを諦めてしまうのか?桜桃の味を忘れてしまうのか?」

「桜桃の味」 1997年 イラン映画
アッバス・キアロスタミ監督

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1997年カンヌ映画祭パルムドール受賞作品の「桜桃の味」のワンシーンでの名セリフ。
物語は自殺を決意した中年の男が、それを手伝ってくれる人を探し回る様子を、ドキュメンタリータッチで淡々と映します。

「私は夜に睡眠薬を飲んで穴の中に横たわる。次の朝に来て、穴の中の私を呼んでほしい。返事がなかったらそのまま埋めてほしい」
やがて男は願いを聞いてくれる老人に出会います。その老人が男に語った昔話が胸を打ちます。

老人もまた若いころに生活苦から自殺を決意し、実行しようとしましたが、桑の木に登りロープを掛けようとしたとき、桑の実が腕に触れます。

熟れた桑の実だった。一つ食べた。甘かった。二つ食べ、三つ食べ、いつの間にか夜が明け、山の向こうに日が昇ってきた。
美しい太陽!美しい風景!美しい緑!学校へ行く子供たちの声が聞こえてきた。子供たちが木を揺すれと。わしは木を揺すった。皆、落ちた実を食べた。わしは嬉しくなった。それで、桑の実を摘んで家に持って帰った。
妻はまだ眠っていた。妻も起きてから桑の実を食べた。美味しいと言ってね。わしは死を置き忘れて桑の実を持って帰った。桑の実に命を救われた。

「すべてを拒み、すべてを諦めてしまうのか?桜桃の味を忘れてしまうのか?」

絶望の淵にあった者が、ひとつの果実の味によって視点が180度変わり世界の甘美さを思い出す。

なにげない日常の中にも自分の視点を変えるだけで、普段気付かない美しさが潜んでいるのかもしれません。

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